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特集 木本誠二教授退官記念特集
炎症性動脈瘤の外科
Surgery on the Inflammatory Aneurysm
和田 達雄
1
,
松本 昭彦
1
,
貴邑 健司
1
Tatsuo WADA
1
1横浜市立大学医学部第1外科
pp.763-770
発行日 1968年6月10日
Published Date 1968/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204600
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はじめに
わが国における動脈瘤の根治手術は,木本教授によつて確立されたといっても過言ではない.木本教授が腹大動脈瘤の摘除移植手術に成功されたのは,昭和27年のことである1).当時同様な手術に成功したという報告はほとんどなく,世界の文献上2例がみられただけであつた.
筆者和田は,この当時から,心臓血管外科の研究に従事しはじめたのであるが,昭和32年,杉江教授の北大赴任以後,もつぱら血管外科の研究に専念し,木本教授の御指導のもとに多数の血管外科症例を経験する機会に恵まれることとなつた.このような環境のもとで,東大木本外科における動脈瘤の手術例は年々増加していつたが,症例の増加につれて,従来粥状硬化性動脈瘤として一括されている腹大動脈瘤のなかに,臨床経過,手術所見および手術標本の病理所見のうえで,ときどき変つた形のものがあることが気づかれるようになった.この観点から関2)は,昭和39年に東大木本外科における腹大動脈瘤症例58例について,詳細な臨床病理学的検討を加え,その約77%はいわゆる粥状硬化に起因するものであるが,これ以外に中膜壊死や炎症にもとづくと考えられるものがあり,とくに後者は,約15%にも達し,その形態が嚢状,仮性動脈瘤型であるところから臨床的に重要であるという研究を発表している.
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