Japanese
English
論説
肝内胆石症の病因および診断について
Classification and diagnosis of the intrahepatic gallstone disease.
志村 秀彦
1
Hidehiko SHIMURA
1
1九州大学医学部第1外科教室
pp.231-240
発行日 1968年2月20日
Published Date 1968/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204519
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はじめに
肝内胆石症は肝内胆管に結石の発生する疾患であるが,しばしば肝外胆管内の結石を合併しているので従来特別な疾患とは考えられておらず胆管内結石として一括されていた.然るに最近胆道手術後の愁訴例を検討したところ,胆管内遺残結石症の中に難治の結石症が存在する事実が明らかとなつた.これらの難治性胆石症の大部分が肝内結石症であり,中には肝内胆管が泥状,無構造のビリルビン結石で充満されている例もある.これらの結石は単なる胆管ドレーナージ,胆管洗浄によつても容易に排出されず,頻回なる発作の後,遂には肝障害および肝膿瘍のために死の転期をとるに至るものである.
肝内胆石症の概念は始めは病理学者の間で知られていたにすぎない(第1表).すなわちBeer(1904)は250例の屍体解剖の結果72例の胆石症の6例,8.3%に肝内胆石を発見して以来,結石の成因および治療上臨床家の注目をあびるに至つた.然しなお臨床的に肝内結石を発見することは当時として困難であり,極めてまれなものとして取扱われていた.その後本邦で稲田(松尾)(昭5)は剖検および臨床例で129例の胆石例中23例(17.8%)に肝内胆石を認め,松尾はその特有な臨床症状より肝内における結石の発生が胆汁のうつ滞,細菌感染等のほかに,肝内寄生虫の影響や肝機能と関連した胆汁組成の変化にその原因を求めた.
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