グラフ
乳癌の全乳房大切片標本と乳房レ線像について
川島 健吉
1
,
高橋 勇
1
,
伊藤 久寿
1
,
高田 貞夫
1
,
井上 善弘
1
,
岩渕 正之
1
,
林 和雄
1
1東京医歯大第1外科
pp.5-10
発行日 1967年1月20日
Published Date 1967/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204193
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近年,癌に対する対策は国家的事業としてとりあげられ,乳癌についても,一般社会,とくに婦人の関心と知識が向上したため,比較的早期の乳癌が治療の対象となりつつある傾向は,まことに喜ばしいことである,一方,ほとんど生理的な乳腺の腫脹や疼痛に際しても,乳癌と関連づけて恐怖を抱く婦人が少なくないことも事実であり,診療に従事する医師として,乳腺腫瘤の訴えがはたして悪性あるいは悪性化のおそれがあるものか,あるいはまつたく良性もしくは生理的範疇に属するものかを,明確に鑑別診断する責任がいよいよ増大し,診断と治療上の慎重さが要求されるに至つた.周知の通りいずれの疾患も,確定診断が下されて,はじめて適正な治療が可能であることは,いうまでもないが,現状ではいまだ充分とはいえない点がある.
治療を必要とする乳腺疾患の確実な選択と,不必要な苦痛を与えることなく,いたづらに乳癌の恐怖におののく患者に安心感を抱かせるために,より正確な診断法の確立が痛感される.われわれは,最近4カ年間に約800例におよぶ乳腺患者を対象として,種々な理学的補助診断法を施行してきたが,乳腺患者の内訳をみると,最も多いものは乳腺症(約37%)であり,ついで乳腺線維腺腫(約15%),乳腺痛(約13%),乳癌(約10%),乳腺炎(約4%)の順であった.
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