診断のポイント
膵疾患の鑑別診断(2)—慢性膵炎
若林 利重
1,2
1東京警察病院外科
2東京大学
pp.1278-1282
発行日 1966年9月20日
Published Date 1966/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204095
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はじめに
慢性膵炎は,内科では比較的多い疾患とされており,近時増加の傾向にあると言われているが,外科医が開腹によつて診断しうる慢性膵炎は意外に少ないように思われる.
昭和31年から40年までの10年間に,臨床的に慢性膵炎として開腹したものが27例ある.そのうち,術前診断の的中したものはわづかに12例にすぎず,慢性膵炎と他の疾患(胆石症2例,環状膵1例)との合併例が3例,慢性膵炎でなく,まつたく別の疾患であつたものが12例もある.別の疾患の内訳は膵癌3例,胃・十二指腸潰瘍,低圧性胆道ヂスキネシー,腸管大網癒着症各2例,十二指腸癌,移動十二指腸,Vater乳頭部狹窄各1例である.また術後診断が慢性膵炎で,術前診断が他の病名であつたものは11例あるが,その内訳は膵癌,胃潰瘍各3例,胃癌2例,胆石症,胃炎,総胆管嚢腫術後後遺症(黄疸)各1例となつている.以上の数字から推しても慢性膵炎の誤診率はかなり高く,その鑑別診断は非常に難しいといわざるをえない.
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