外国雑誌より
Hypercapniaの外科的応用
上井 巌
1
1東京大学医学部胸部外科
pp.938
発行日 1966年7月20日
Published Date 1966/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204035
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HypercapniaまたはHypercarbiaといわれる状態はCO2の蓄積のため血中pCO2の上昇pHの低下をきたす状態を意味しこれが麻酔中などにおこることは好ましくないものとされていたが最近Hypercapniaの効果を外科的に応用しようという試みがなされ,かなりの利点のあることが注目されている.
Hypercarbiaの効果はNunn1)によれば血中pCO2の上昇のため呼吸性アチドージスをきたし,代償的に代謝性アルカロージスを誘起する.また酸化ヘモグロビンの解離曲線の右方偏位がおこり組織における酸素拡散が容易となるとされている.心臓に対して被刺激性の増大,とくにCyclopropane麻酔下では不整脈をきたすことがある2).脈管系に対しては自律神経を介して交感神経緊張性に働く一方,直接作用として血管拡張が重なりあうため一定しないが,一般にHypercarbiaによって脈搏数の増加,血圧の上昇,末梢抵抗の減少,心搏出量の増加がおこるが,脳血管はCO2に対する感受性は安定しており,血中pCO2の上昇によつて拡張し,脳血流量の増加がみられるが,脳酸素消費量には著変はないとされている.また血中pCO2が80mmHg以上になつて麻酔効果があり,その作用はN2Oのそれにもつともよく似ているという.
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