巻頭言
Permissive Hypercapnia
冨田 友幸
1
1北里大学医学部内科
pp.951
発行日 1995年10月15日
Published Date 1995/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901125
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ARDSや肺感染症あるいは重症の気道閉塞の患者に人工呼吸器による治療を行うとき,必要な肺胞換気を得るために高い気道内圧を必要とする症例をしばしば経験する.これらの疾患では,比較的正常な肺胞と浸潤や無気肺,気道閉塞などの部分とが混在しており,全体の肺胞換気を維持しようとして気道内圧を高めると正常な肺胞が過剰に膨張し血流が換気の少ない肺胞へシフトして換気/血流比の不均等が増悪する.さらに,肺胞内外の差圧が30cmH2Oを越えると肺胞上皮や毛細血管に障害が起こり,気胸などのbarotraumaが引き起こされる.重篤な合併症であるsepsisも加圧による肺の損傷が原因であると考えられている.
これらの防止のために気道内圧を下げると肺胞換気が低下しPaCO2が上昇して呼吸性アシドーシスが起き,心血管系,中枢神経系をはじめ様々な臓器,組織に障害を引き起こす.したがって,治療の現場では高い気道内圧による肺の障害の可能性と高炭酸ガス血症による障害の危険性とどちらを選択するかを迫られる.近年,ある程度の高炭酸ガス血症を許容して換気量を必要最小限にとどめるpermissive hypercapnia(controlledmechanical hypoventilation)の価値が認められてきた.
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