特集 腹部外科の臨床
研究と報告
トロトラスト注射後発生した胆管癌の1例
田中 富雄
1
,
河野 恒文
2
,
今川 玄一
3
1愛媛県立中央病院外科
2愛媛県立中央病院放射線科
3愛媛県立中央病院検査科
pp.1225-1229
発行日 1965年9月20日
Published Date 1965/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203744
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トロトラストは1928年頃から優秀な造影能をもつ肝,脾,血管系などの造影剤として使用されて来た.投与後の組織分布や直接副作用については多数の研究があり,細網内皮細胞に長年沈着残留することが知られている.またその成分であるトリウムは半減期の極めて長い放射性元素であり,それによる晩期障害時に発癌の可能性が最近とみに重要視され,発癌症例の報告が見られるようになつた.
著者は約26年前に静脈内に投与されたトロトラストが肝,脾に大量に沈着して難治性の肝障害を起こし,剖検によつて胆管癌の発生を認めた1例を経験したので報告するとともに文献的考察を試みたい.
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