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特集 癌の進展
論説
病理学からみた癌の進展—転移に関連する若干の基礎的問題
Spread of Cacinoma as Viewed from a Pathological Standpoint:Some Fundamental Problems with Regard to Metastasis
今井 環
1
Tamaki IMAI
1
1九州大学医学部癌研究所病理部
pp.1365-1369
発行日 1963年11月20日
Published Date 1963/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203195
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緒言
手術や照射のような,局所を対象とする治療の技術が進歩して来る一方,化学療法の普及が著しくなると,医師や研究者の目が,あらためて癌の転移へと向けられるのは自然である.日本癌学会総会の演題を見ても,ここ数年来,転移という部門が特に設けられるようになり,転移を主題としたシンポジウムも開かれるといつた情勢にある.文部省科学研究班にも転移の班があり,なかなか活発であつた.
このような気運になつても,癌の転移には研究者を容易に近づかしめない大きい問題が,幾つも残されている.本質的な問題になると,ほとんど判つていないとさえ言わなければならぬのが現状である.このような雰囲気の中では,じつくりと基礎的の考察から練りなおすのが,むしろ近道であるかも知れない.それにしても,癌の転移には余りにも多くの基礎的問題が包含されており,限られた紙数でその多くに手を染めることは不可能である.ここでは任意に若干の問題だけを取上げることとし,考察を加えてみたい.
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