Japanese
English
綜説
外科領域の癌化学療法—手術との併用を中心に
Cancer chemotherapy in surgery, especially on combined therapy with operative treatment
鮫島 夏樹
1
,
磯松 俊夫
1
Natsuki SAMESHIMA
1
,
Toshio ISOMATSU
1
1北海道大学医学部第2外科教室
12nd Surgical Department, School of Medicine,Hokkaido Univ.
pp.1141-1147
発行日 1962年11月20日
Published Date 1962/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202992
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はじめに
癌の化学療法剤としてNitrogen mustard以来今日まで多数の制癌剤が使用されて来た.癌化学療法の理想は凡ての癌を薬物のみによつて治癒せしめることではあるが,現在では白血病,ホジキン氏病あるいはある種の肉腫に僅かに延命効果を認めるのみで,臨床家の最もしばしば遭遇する消化器癌には,これらの効果は殆ど期待出来ない状態である.勿論一時的にせよ自覚的あるいは他覚的効果が見られることは決して軽視出来ないが,制癌剤の真の価値は癌患者に対する延命効果において決定されるべきものであろう.確かに動物腫瘍に対する制癌剤の優れた効果は,人の癌治療に少なからざる希望を与えるものであるが,スクリーニングに用いられる可移植性動物腫瘍は自然発生的人癌とその態度を異にするもので,動物実験あるいはin vitroの実験を人体にそのままあてはめることは出来ない.
Greenstein1)や中原ら2)による癌生体の生化学的変化に関する知見,ことにPool3)らやEngell4)によつて積極的に進められた癌患者流血中の癌細胞の証明などの事実は,癌は最早や局所の病変に止まらず全身的疾患として考うべきことを教える.治療面における局所療法としての外科手術または放射線治療の遠隔成績が,2,30年来足踏みしていることからも,癌に対する治療概念を更めて考えなおす必要があると痛感させられる.
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