特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
手の外科
田島 達也
1
1新潟大学
pp.922-929
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202969
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Ⅰ.診断上の困難症
「手の外科」の対象となる症例を正確に診断する基礎は機能的解剖学である.これを熟知していれば一見非常に複雑にみえる症状もその発現メカニズムを氷解できる場合が多い.もちろん手の機能解剖学はかなり複雑なものなので個々の症例をみて直ちにその解剖学的変化と症状発現の関連性を見破ることができるほどそれに精通するにはかなりの熟練を要する.この意味では手の疾患の診断はむずかしい場合が多いとも言える.
つぎに機能解剖学を熟知していてもある症状をきたす原因が単一でない場合鑑別診断の手がかりが得難いことがある.たとえばある関節運動が数個の協同筋で行なわれる場合そのうちの1個の筋の筋力を臨床的に知ることは困難であり,また挫創後指関節拘縮を呈する場合それが皮膚性か腱性か靱帯,関節嚢性かあるいは関節性のいずれであるか,またはそのうち何が合併しているかを判定することは非常にむずかしい.しかしこのような場合においても筋電図や機能解剖を基礎として発展した特殊な臨床テストを応用することによつて,ある程度見当をつけることができる.
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