特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
黒色上皮腫
川村 太郎
1
1東京大学
pp.917-921
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202968
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黒色上皮腫(Melanoepitheliome,Ota)については他1)にも書いたことがあるから理論的興味に関する煩雑な事柄はそれらに譲ることにして,ここでは臨床的の事項につき,2,3述べて見たい.この病名は遺憾ながらあまり広く用いられて居ないが,病気そのものは決して稀なものでない.その由来を簡単に述べると,この病名は故太田先生2)が昭和15年日本皮膚科学会総会の宿題報告のときにはじめて用いられた.原語のMelanoepitheliomeは1927年B. Bloch3))がはじめて用いたbenigne nichtnaevoide Melanoepitheliomeに由来するものである.何れの場合も複数であつて,1群の腫瘍の綜称である.そして黒色上皮腫(太田)は黒色を呈する上皮性腫瘍の総てを含む広い概念である.因みに次の分類は,悪性黒色腫や色素細胞母斑(母斑細胞母斑)の系列の腫瘍と上皮性の黒色腫瘍とを対立させる必要に迫られて作られたものである.
黒色腫
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