特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
女性性器異常
赤須 文男
1
1金沢大学
pp.905-908
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202966
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臨床検査法の著しい進歩は,昔のように,診断困難を来さしめることを少くさせたことは否定出来ない.けれども,Needle biopsyや体液のSmear testなどをしない限り,組織学的の診断は依然として困難で,組織所見と臨床経過とは密接な関連があるからこの面で,困難することは少くない.もう1つ臨床検査が詳細に且つ広汎に行われるようになつたにしても,病体内の変化は時々刻々変つてゆくものであるから一応の検査成績が出ても,それが数日後にはがらりと変つてしまうこともある.といつて,凡ての検査をしばしば実施することは容易でないし,また,多くの検査は即座に結果を示してくれるものではなく,数日を要するものも少くないからこの点でも診断の困難さはある筈である.十分な検査をせずに,たとえば開腹を行うことなどは,つまり診査開腹などということは極力さけなければならないことは云うまでもない.十分な検査もせず,ただ慢然と開腹して,病変がなかつたなどは倫理的にも背徳行為であることは勿論,医師の特権の濫用のそしりを受けても止むを得ないだろう.けれども,多くの臨床検査のデータにもかかわらず診断が困難のときはメスをとることも止むを得ない.
以上の私見を裏書きして,2,3の症例を記述する.この中で,後の2つの症例は,医師の依頼で往診してのものであるから,正確な記載は先方のカルテをみないと不明であるから骨子だけを思出すままに記述した.
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