特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
消化管出血
中山 恒明
1
,
山本 勝美
1
,
高橋 康
2
1千葉大学
2千葉大学医学部中山外科
pp.827-834
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202953
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Ⅰ.まえがき
吐血,下血を以て現われる消化管出血は,それが大量の場合に惹起されるショック状態に至れば勿論のこと,仮令少量でも患者を初め,その家族を大きな不安に陥れ,医師にとつてもこのさいに採る可き処置如何で,予後に大きな影響をもたらす.近年出血に対する治療や予防は,その病態生理解明への努力,輸血,代用血液の進歩と普及,化学療法の発達により大きな発展を遂げたが,未だ完全とは云えず,外科治療と出血の問題は昔から現在,さらに将来に亘つて,外科医にとつて離れがたい関心事である.外科的立場から消化管出血を扱う場合,問題は術前,術中,術後の出血に大別されよう.
明らかに大量の吐血,下血を主な訴えとして外来を訪れる患者に対しては速やかによつて来る原因を究明し,治療方針を立てなければならない.すなわち①出血の程度はどの位か(量),②何処から出血しているか(部位),③現在も続いて出血しているか(血液循環不全への移行),④出血を来した原因疾患は何か,⑤応急処置,⑥治療方針の決定と云うことが臨機応変に行われなければならない.
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