特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
胃癌の脳膜転移について
陣内 伝之助
1
,
西本 詮
1
,
貞本 和彦
1
1岡山大学
pp.835-841
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202954
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まえがき
転移性脳腫瘍は,しばしばその原発病巣が発見されないため,単なる原発性脳腫瘍として手術され,死後剖見により,はじめてそれが転移性であることが判明する場合が多い.特に瀰漫性に軟脳膜に癌転移をきたす,稀有な瀰漫性軟脳膜癌腫症(diffuse metastatic meningeal carcinomatosis)等では,たとえ生前に原発病巣が発見されたとしても,確実にその脳膜転移の診断を下すことは困難であろう.
私たちは,最近幸いにも,生前に本症の原発病巣を発見し,さらに脳穿刺を行つて軟脳膜のみへの転移を証明して診断を確実にした症例を経験した.この症例はさらに死後剖見の結果,脳内に「転移性癌性脳炎(diffuse metastatic carcinoma-tous encephalitis)」を併発しおることを知り,貴重な1例と考えられるので,ここに報告し諸家の御批判を仰ぎたいと思う.
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