特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
麻酔
田中 亮
1
1東京大学医学部麻酔学教室
pp.709-712
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202937
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麻酔学領域における診断と治療上の困難症は,特殊な診療専門分野であるので,多くは麻酔がその中心となり,常に診断と治療を主体とした他の臨床専門科におけるそれとは異なるものである.私達は,極めて短時間に,ある疾患または病状などに対処しなければならないことが多い.患者は少くとも生理的状態を保つていることは稀である.全身麻酔,局所麻酔,あるいは低体温の状態で,私達は,出来るだけ患者の苦痛をとり除き,生理的状態に保ち,術者に協力しようとしているものである.かかる時の困難症とは,私達の領域では,いわゆる麻酔の合併症をも含まれると思う.
筆者が経験し,また観察した麻酔症例中,以下に述べる数例は,合併症としては,重症でなく困難症と云えないかも知れないが,特に印象に残つたものである.これらの症例は,術者の協力を得なければ解決出来ない諸問題を残し,実地臨床家の為に,なんらかの御参考になるものと思うので紹介する.
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