特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
両側気胸,その麻酔的考察
米沢 利英
1
1岩手医科大学
pp.713-717
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202938
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麻酔前に患者の手術治療に対する危険率を予測し,準備し手術するのが普通であるが,術前数値的に現し得ない生理機能上の特異性や体質的な異常のある患者では治療経過中に極めて処置の困難な事態に出合うことがある.肺外科領域は近事肺結核から肺癌,Bleb,肺気腫にまで拡大されているが,肺気腫を伴う患者は麻酔管理上最も重要な肺機能上に著しい特異性があるので,常識的な呼吸管理によると突然重大な結果が生ずることがある.この死因は死後の剖検によつても特にとり上げられるべき死亡原因が明かでないことも多く,死因は生存中の生理機能の異常により決定されている.これは麻酔にとつて重大なことで,生存中の患者状態の慎重な観察によって対処すべきものである.今まで小数ではあるが,肺気腫の合併のあるために手術死の原因の一部となつたと思われる例1)や,手術中患者管理に困難を伴つた症例を経験して居る.また患者自宅で肺気胞の破裂によつて両側気胸を起し,その手術までの処置や手術および手術後の処置にいろいろと考えるべき例を経験したのでこの症例を述べ,麻酔の立場から考察を加えて見る.
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