特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅰ)
胃・十二指腸疾患
村上 忠重
1
,
大津 留敬
1
,
溝口 一郎
1
,
内藤 正司
1
,
今田 英俊
1
1昭和医科大学
pp.465-469
発行日 1962年6月20日
Published Date 1962/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202901
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最近は麻酔や輸血の進歩のおかげで,ゆつくりと落着いた手術が出来るようになつたし,また化学療法や術後の管理法が進歩したために,腹膜炎,肺炎その他の術後合併症に苦しめられることもまずなくなつた.したがつて急性の出血や穿孔例に対して救急手術を行うような場合をのぞけば,胃切除術の後に,困難症を来たすことは殆んどないと言つてよい.私どもの最近の記憶では噴門癌の切除時,リンパ節の廓清のために知らずに胆嚢の壁を傷つけていて,術後外胆汁瘻を来たした1例を思い出す程度である.その例もしかし約1カ月の観察によつて自然に瘻が閉じた.したがつて編集者の丁度註文に応ずるような例ははなはだ少ない.
そこで胃・十二指腸の疾患の診断に迷つた例1例と,術後の困難症としてダンピング症状を呈した1例,食道・空腸吻合に狭窄を来した例,腸閉塞症を発した1例,ならびに2回目の手術によつて,再発した胃癌の剔除に成功した例などについて経過をのべ責をふせぎたいと考える.
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