Japanese
English
綜説
胃癌の組織発生
Histogenesis of the Stomach Cancer
卜部 美代志
1
,
水上 哲次
1
,
安井 格
1
,
山本 恵一
1
,
高野 利一郎
1
1金沢大学医学部第一外科教室
pp.917-932
発行日 1961年11月20日
Published Date 1961/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202831
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緒言
胃癌の発生に関しては前世紀末から多数の重要な研究報告が発表され,種々に論議されている.胃癌の発生母地として従来挙げられているものは(1)胃潰瘍,(2)慢性胃炎,(3)胃ポリープ,(4)胃壁内迷入組織の4つである.
Cruveilhierは1839年に胃潰瘍から発生したと考えられる胃癌について肉眼的の記載を行つたが,組織学的の精細な検索を伴う潰瘍癌の記載はHauser(1883)12)を以て始めとする。彼は慢性潰瘍としての充分な条件を具える病変の辺縁にだけ癌細胞をみとめた場合潰瘍癌と診断し得ると定義し,癌化の原因は辺縁粘膜の異型増殖にあると述べた.その後Verse42)43),Payr37),Orator36),Will-son & Mac Carty,Sternberg39),山極44)45)等によつて胃潰瘍癌の存在が確定された.胃潰瘍を母地とした胃癌の存在を肯定せんとする意見に対し,Stromyer41)は潰瘍癌と云われているものはすべて原発性胃癌の二次的潰瘍であると反駁し,潰瘍癌の存在を否定している.1924年Moszkowicz27-29)は胃潰瘍の癌化はその再生粘膜に原因すると述べ,その異型増殖の原因を胃小窩に存在する細胞の再生作用によると考えた.再生現象は未分化上皮によつて行われ,反覆再生を起す過程において再生の過誤が起り,未分化上皮が漸次誤つた方向に変態を起すことによつて癌の発生を来すと考えた.
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