症例
日本住血吸虫卵の寄生をみた胃潰瘍の1治験例
矢野 博道
1
,
中村 康広
1
YANO Hiromichi
1
,
Yasuhiro NAKAMURA
1
1久留米大学医学部脇坂外科教室
pp.903-905
発行日 1961年10月20日
Published Date 1961/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202829
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いとぐち
日本住血吸虫症は特定の地域に発生する地方病として古くから知られ,筑後川流域も亦その浸淫地の一つとして有名である.
本症は従来,内科的疾患でその虫卵は主として門脈系に寄生するが,外科的障害を惹起することも稀ではない.すなわち,教室の吉岡1)は日本住血吸虫卵と虫垂炎との関係を詳細に検討して,本虫卵の寄生は虫垂の病変を容易に急性化膿性炎症に誘導せしめ得ると報告し,教室の橋本2)は本虫卵によるS字状結腸部の慢性炎症性腫瘍について,また,下河辺3)も直腸狭窄例についてそれぞれ発表している.その他,虫垂壁を除く腸管壁に本虫卵が寄生して外科的障害を惹起したとの報告は比較的多く,40例におよぶ程あるが,胃潰瘍壁に寄生したとの記載は胃癌と誤診した胃潰瘍壁に日本住血吸虫卵をみたとの古賀等4)の1例をみるに過ぎない.
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