口繪
日本住血吸虫病
杉浦 三郞
1,2
1山梨醫學研究所
2地方病研究部
pp.2-4
発行日 1952年2月10日
Published Date 1952/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200223
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或る特定の地域に限定せられた風土病であつて農業を營む者は生涯を通じて罹患しないけ寧ろ稀ともいうべき普遍的な疾病であらゆる患者を治療するに當り日本住血吸虫病の存在を除外して診療するのは不可能である。
主な流行地は支那,日本,フイリツピン群島セレベス島サマール島等の極東地方であつて支那では揚子江沿岸及び海岸沿いに香港に至る地域が重感染地とせられその他廣東,雲南の一部にも存在する。我が國では山梨縣甲府盆地,岡山,廣島兩縣に跨る片山,福山地方,靜岡縣沼津地方,佐賀縣久留米地方,千葉,茨城兩縣の利根川沿岸を主とする。本病は日本住血吸虫の感染に依つて起る寄生虫病であつて人及補乳動物を終末宿主とする。感染した動物の糞便に虫卵を排泄し此の卵は容易に孵化しで「メラチヂウム」と云う仔虫が激出し中間宿主である卷貝に侵入する。此の卷貝は發見者の名を取つて宮入貝と云つている。卷貝に入つたものは貝の肝臟の中で成熟して「セルカリア」に分裂し之が人體或は家畜の皮膚より侵入して30日位たつと成熟した虫となる此の病氣に罹ると急性期には「チフス」樣の發熱をする事があり或は又赤痢樣な粘液便を排泄する。次第に衰弱して慢性に陷る。
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