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椋鳥住血吸虫病について
田部 浩
1
1岡山大學醫學部
pp.207-212
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200819
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島根縣の宍道湖沿岸地方には,多年湖岸病という一種の地方病が發生し,農民が困つていることを聞いておりました。私がこの湖岸病の研究に着手するようになりましたのは,終戰後まもなくアメリカの寄生虫學者ハンター大佐・マツクマレン博士の一行が岡山に私を訪ねて來られました際,文献をもらいましてアメリカの住血吸虫皮膚炎に關するマツクマレン博士の新しい研究を知る機會を得たことが動機となつたのであります。私はこのアメリカの學者より受けた示唆を,今なお深く感謝しております。
研究をはじめましたのは昭和22年の夏でありますが,私は湖岸病發生地の水田に極めて小さい平卷貝を見出しましたので,これを調べてまいりますうち,その翌年平卷貝の一つの種類から人体に皮膚炎を起す新しい住血吸虫セルカリアを發見いたしました。このセルカリアは實驗的に家鶏の体内によく發育し特異な卵子を出しましたので,更に多くの種類の野鳥を調べ遂にムクドリが自然の終宿主であることをつきとめ,成虫を見出すことが出來ました。そしてこの吸虫の体制は分類上住血吸虫の新種でありますので,私はこれをGigantobilharzia sturniaeと命名し和名を椋鳥住血吸虫と稱することにしたのであります。その後研究に於て,私どもの得ました知見はいろいろありますが,こゝには
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