第54回日本外科学会宿題報告要旨
膵頭十二指腸切除の臨床
鈴木 礼三郞
1
Reizaburo SUZUKI
1
1東北大学桂外科教室
pp.311-314
発行日 1954年5月20日
Published Date 1954/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201435
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1.緒言
膵頭十二指腸切除に関する領域は外科でも最も希望の少い暗黒の部面で,手術成績も悪くかつ重篤な患者の生命を賭しての大手術も癌再発により,その努力も無駄になる場合が多い.現在皆様の前にこの報告をする迄に入院死6例と云う尊い犠牲を払いました.勿論之等は教室の初期の頃のものですが,本邦の症例を見ましても,昭和18年久留教授による第1例から現在まで逐年症例増加を見,入院死亡率は漸次下降しているとは云え,他疾患に比し極めて高い死亡率を見ている現況で,本邦170例の手術症例の入院死亡率はほとんど40%にならんとして居る.手術成績を悪くするものに解剖学的に胃,十二指腸,胆道,膵に同時に侵襲が加えられ,胆道再建,残存膵の処置が容易でなく,かつ膵頭後面に結紮切断を許されない門脈,上腸間膜静脈があり,之等の血管が非常に損傷され易く,膵頭癌に於てはかなりな程度に病変の進行しない限り黄疸は現れず,かつ黄疸が発生しても仲々外科医を訪れず手術時期を喪失し易く多少なりとも二次的肝障碍の必発すること等が本手術を暗くするものである.
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