Derm.2025
タヌキの脂
山本 真有子
1
1高知大学医学部皮膚科
pp.172
発行日 2025年4月10日
Published Date 2025/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790050172b
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筆者の住む高知県では昔から「タヌキの脂」なるものが民間薬として利用されている.道の駅などで販売されている場合もある.熱傷,擦過傷,切創,凍瘡などに使う常備薬としているという人も時々いる.風邪や腹痛時の飲み薬として利用することもあるという.万能薬として重宝される一方で,タヌキの脂を塗れば治ると信じて長期間自己治療を続け,受診が遅れる下腿潰瘍や熱傷の患者がいることも事実である.最近,掌蹠の角化性病変を半年以上治療している患者がいる.病理組織所見は角質増殖と海綿状態のみである.ステロイド,サリチル酸,ビタミンD3,ヘパリン類似物質他あらゆる外用を試みるも岩のような角質増殖は改善しなかった.各種免疫調整薬内服も試みたが満足できる効果は得られないばかりか蜂巣炎を2回起こし,内服はしないと決めた.それでもわずかずつ改善していたところ,あるとき見違えるほどの改善をみた.何が良かったのか,と尋ねると,実はタヌキの脂を3か月前から塗っている.先生にいつ言おうか迷っていました,と.毎朝少量を飲んでもいるとのことであった.知り合いの猟師が捕獲したタヌキの皮を剥ぎ,皮下脂肪を集め焼いて出てくる脂を集めて保存するらしい.匂いもなく内服に抵抗はないようだ.同時期に始めたJAK阻害薬外用とどちらが効いているのか定かではない.
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