外科と生理
その17
須田 勇
1
1慶應大學醫學部生理學教室
pp.200-201
発行日 1953年4月20日
Published Date 1953/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201226
- 有料閲覧
- 文献概要
4:3 臥位性呼吸困難(orthopnea)
臥位では呼吸困難があるが坐位をとると呼吸が樂になるという現象が所謂坐位呼吸である.坐位呼吸というのは変な言葉で,臥位での呼吸困難といつた方がよく判る.
臥位で発現する呼吸困難が何故坐位では消失するか,ということの生理学的機序に就ては色々に考えられて来た.第1に考えられたのに坐位によつて肺活量が増すというと横隔膜の重力による下降が起る。同樣に,肺の血管系に鬱血があれば重力によつて除かれる部分も出来るが,それによつて呼吸困難が改善されることも考えられる.第2は,坐位の方が肺組織の伸屈が充分行われるからとの考え方もある.第3に,第1と同じ理由で中枢での鬱血が除かれ血液循環がよくなるために代謝物質が洗い洗されることが呼吸困難の取除かれる原因だとの考えもある.要するに,臥位と坐位とで作用する物理的要因に呼吸改善の契機を求めてこの現象を説明しよととするものである.そこで,前に述べた一般に呼吸困難を起す要因が坐位から臥位に移る時に増強されるか否かを檢討することが順序である.この点をAltschuleの意見に從つて次に述べる.
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.