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感想を述べさせていただきます。ひるがえつてみますと,本会が発祥してから,今年が10周年記念だと思います。夏の暑いときだつたと思いますが,お茶の水の橋の上で亡くなられた名古屋の斎藤真先生にパッタリお会いしました。そのときこれから脳神経外科を作るんだというお話しがでて,その後,中田先生,清水教授,楢林助教授というような方々が御賛同になり,会をお初めになつたのですがそのときは,まだ会員も少なく,今日の隆盛は,あまり期待しておりませんでした。今日のこの非常な盛会ははなはだ御同慶にたえない次第です。荒木教授,佐野助教授より,京大と東大の大きな,ぼう大な統計をみせていただき,手術の死亡率も20%か30%で,5年,あるいは4年と術後生存するものもあるということを伺いました。これは,非常に大きくPRをしてもいいのではないかと思います。みんなが手術がうまくなつたんだろうかと申しあげたのですが,荒木教授などは,麻酔が良くなつたからだと,非常に謙遜なさいました。しかし,これはやはり,手術のやり方がうまくなつたのではないかと思います。たとえて申しますと,新婚夫婦みたいなもので,初めてtumorを見つけるとおもしろがつていじくりまわす(笑),そのうちにだんだん馴れてきますと,このくらいでやめておこうと諦らめるようなもので,だんだん成績が良くなつたのではないかと(笑)。私は解釈いたしています。それからこと脳腫瘍に関しては,外科医はNeuroのほうが非常に小さかつたので,みんなで努力して,Neuroのほうをだんだんと勉強し,Surgeryと同じ程度になるまで私たちみんなが努力したいと考えています。少なくとも脳腫瘍の診断に関しては,臨床症状から診断をつけるということは,外科医としても非常にたやすいことになりました。しかしながら清水教授がお始めになつた経皮的な動脈撮影とか,モリヨドールの脳室撮影とか,あるいは気脳法とか,そういうものを補助診断として使えば,まちがいなく診断がつくということになつたと思います。この点,さきほど黒岩助教授が,非常に反省的に内科のことを述べておられましたが,内科の方は大学勤務の方は,反省的で,非常に勉強しておられるから,すぐ診断がつくと思います。しかし,一般におられる内科の方は,Tu—morを知らないわけではないのですが,温存しておいて,非常に大きな腫瘍にまで育ててくださる(笑)。そういう具合で,これは外科医としては,非常に迷惑なことで,これはあまり,PRはできませんが,これから将来もどんどん内科の方の御協力を得たいと考えています。このことは脳腫瘍だけでなくたとえば蜘網膜下出血,これも内科で温存されているものが多いと思います。ひるがえつて考えてみますと,脳腫瘍をとつた後の予後は,5年,4年,3年,といいますが,これは胃ガンの手術は5年たてば全治だというのとほとんど同じで,胃ガンの成績よりはよろしいと言つても良いと思います。しかし,Bailey先生が脳腫瘍の治療は,すなわち脳のガンを治療しているのである,そういう心がまえでとりかからなければならないといわれておりますが,ここれはまことに名言であると思います。
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