最近の外國外科
出血性ショックに於ける動脈内輸血と靜脈内輸血の適應症,他
W. Hügin
pp.52-53
発行日 1953年1月20日
Published Date 1953/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201186
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出血性ショックの最良の治療法は止血することゝ輸血によつて失われた血液を補充することゝにある.しかしこの際に循環している血液量を直ちに正常値に復させることが最も大切である.さもないと脳及び心筋の酸素欠乏による障碍が現れる.靜脈内輸血によつてショックによる低血圧は直ちに上昇し得ない.即ち輸血された血液が小循環を通過して始めて左心に入つて全身に送られるからである.この際屡々酸素欠乏によつて障碍された心臓殊に右心は十分力強く輸血された血液を送り出すことが出来ない.その結果心臓拡張及び靜脈性鬱血,時としては肺水腫が起る.これに反して動脈内鬱血は直接血圧を変化する.実際に露出した動脈の〜大抵末梢小動脈で例えば橈骨動脈などが利用されるが〜血管内に圧力を加えて注入すると大動脈(Aorta)の方に向つて血液は逆流し,そこで直ちに血圧が上昇し始める.そのため心臓の力を借りないでも冠状血管の血行を好轉して,心筋の恢復も速に出来る.動脈内輪血した血液は心臓を通過せずに直接各器官に送られる樣にしなければならない.それには100〜200mmHgの圧力で動脈内に注入して,患者の血圧が80mmHgに恢復するまで輸血を施さなければならない.それによつて心臓殊に右心の力を借りずに恰も第二の心臓の様に外方から血行に働かせるのである.
又迅速に注入する普通の輸血の際に起る肺水腫もこれによつて避け得る.
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