外科と生理
その12
須田 勇
pp.420-421
発行日 1952年8月20日
Published Date 1952/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201079
- 有料閲覧
- 文献概要
III 呼吸運動の調節
呼吸運動は自働運動である.このことは余りにも自明であるので看過され易いが,生理学的には充分興味と重要性のある点である.というのは,自働運動,即ち一定の型の運動を律動的に繰返すことは滑平筋臓器では普通であるが,骨骼筋では呼吸運動以外には認められない現象だからである.一方,呼吸筋は勿論他の骨骼筋が示す一般特性,即ち反射運動と姿勢緊張にも関與している.從つて,呼吸運動は自律系と体制系の両種の反應様式を現す運動である.それで,反射という活動様式と中枢の機能的な構造に触れておくことが呼吸運動の調節に関して正しい理解の根底となる.
生体での調節ということの機序は神経相関と化学相関であり,その調節様式の特徴は自己調節(自働制御)という点にある.神経相関というのは生体に作用した働因が神経衝撃(興奮)という生体特有な通信記号に飜訳されて,それを受取つた組織(これを効果器という)に反應が現れる場合であり,化学相関というのは働因が化学物質(ホルモン)に変形されて血流によつて搬ばれて効果器に反應を現す場合である.何れの場合でも働因を生体特有の通信記号に変形する場所が受容器である.化学相関の場合には通信は血流によつて凡ゆる組織細胞にまで配分されるが,それに應ずる効果器に夫々特異性があるために反應の出現には自ら限定が加えられることになる.
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.