外科と生理
その13
須田 勇
pp.515-518
発行日 1952年10月20日
Published Date 1952/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201115
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2.呼吸中枢の神経相関
2:1呼吸中枢の解剖学的局在
呼吸中枢のような重要な中枢について,その局在は決つていない,などというと随分不思議にも聞えるが,これが呼吸中枢に関する現在までの研究成果の一面である.延髄の第IV脳室底で筆尖の部分を穿刺すると呼吸が停る,というのでFlourens(1842)がこの点を"noeudvital"と名づけたのは有名であるが,これが呼吸中枢を最も狹い部位におしこんでみた局在論の1つである.これに対立して中枢を最も広く,分散性に考えたのが,Mislewsky(1885)に始り,Gad,Marinescue(1893)が主唱した,呼吸中枢は網樣体(Formatio reticularis)全体に拡つている,という考え方である.この何れの立場が「正しい」かは,現在でも色々な実驗成績があつて,うかつに断定することは出来ない.併しこれは,中枢決定の場合に常に用いられる刺戟法と剔除法がその限界を示したもので,例えば,刺戟をして吸気が起つたから吸息の中枢,剔除して呼気で呼吸が止つたから剔除した部位は吸息の中枢,というような素朴な決定法に拠る限りは議論の盡きない問題ではないかと考える.この点に関して,先ず最近の研究業績から檢討してみよう.
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