外科と生理
その11
須田 勇
pp.260-262
発行日 1952年5月20日
Published Date 1952/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201027
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3:4換氣に對する酸素及び炭酸ガスの影響
A.肺胞酸炭ガス張力と換気量
3:3で述べたように炭酸緩衝系に変動があると呼吸運動が変つて炭酸ガスの気相への散出が調節されることが特徴の1つであつた.例えば,食後で胃酸の分泌が旺盛になると,血液の重炭酸は増加して,呼吸は抑制されて肺胞炭酸ガス分圧は上昇することが認められる.同様の現象は重曹を経口的に輿えた場合にも認められるし,反対の現象は酸や塩化アンモニウムを投與した時に現れる.塩化アンモニウムのアンモニアは尿素となるため,この物質は塩酸を與えた場合と同じ効果を及ぼすものである.斯る呼吸運動の変化が如何にして起るかの議論は後に呼吸調節の問題を述べる時に触れることにして,ここでは炭酸ガス分圧の変化と実際に起る呼吸量の変動に就いて述べることにする.
この問題を定量的に取上げたのはHaleane&Peiesley(J. Physiol. 1905, 22:225〜266)もであつた.第3:4A図はGray(1949)によるもので10名の正常人に種々の割合に炭酸ガスを混ぜた空気を呼吸させた場合の換気量の増減を,空気呼吸の場合を1としてその倍数で示したものである.図の実線の如く肺胞分圧と換気量の間には直線関係が認められ,2.5mmHgの上昇で換気量は2倍になつている.換気に変化が起る最小の分圧変動は0.1mmHg程度である.
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