Japanese
English
今月の小外科・5
化膿性筋炎
Suppurative Myositis
中谷 隼男
1
Hayao NAKATANI
1
1東京遞信病院外科
1Surgery, Tokyo Teishin Hospital
pp.316-317
発行日 1950年6月20日
Published Date 1950/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200661
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所変われば病気も変るものであつて,吾々外科医が欧米を巡つて一番気に付くことは何といつても甲状腺腫の手術が多いことである. アルプスとかロッキーの如き地域が関係がある訳である. 胆石症も若干多い樣な気がする. 何の変哲も無さそうなヴイシー温泉の水が壜詰になつて賣られている点でも想像が付く. これはバター其の他の脂肪類を多くとる食物上の習慣も関係があろう. 他方ヘルニアの再発に対する再手術も多い. これは吾々には一寸奇異に感ぜられるが人種的に東洋人とは少し違つて皮膚其の他の組織のたるみ方が著明なことに関係がある. 痛風に至つては吾國では殆どみられない. 殊に手術後の肺動脈血栓症に至つては全く外國独特のものであろう. 例えばヘルニアの如き格別何でもないと思われる手術後一寸用便に行つた瞬間急死するという樣な訳で実に怖わがられる. 自分が暫く世話になつていたKirschner教授(Tübingen, Heidelberg)は本症に対して所謂Trendelenburg氏手術即ち肺動脈中の血栓を摘出する手術を行つて始めて成功した人であるが,其の教室には常時その手術のために血管手術の器具一式を準備して待機していた. パラフィンを塗つた糸を針にとおして消毒してあつた. 然し実際には仲々間に合わなかつた.
それに対して吾國に多い疾患に特発性脱疸がある.尤もソビエットにもある樣である.それからこゝに述べる化膿性筋炎も特殊なものである.本には載つてはいるが実際には外國には殆どない疾患のようである.殊に多発性筋炎となると極めて珍らしいものとされ得る.
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