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緒言
胃潰瘍に對する外科的手術々式として,方今胃切除が遠隔成績最も良好な事は周知の事實であるが胃小彎高位潰瘍の場合には位置の關係上手術手技は困難で,殊に潰瘍が噴門近部に在り,穿通,癒着の甚しい場合には胃の全摘出或いは亞全摘出施行の餘儀無きに至る場合があり,他の位置の胃潰瘍に比べ,胃切除が容易な操作でない事が屡々である。然るに,1923年Madlener氏は3例の幽門遠隔の胃潰瘍に對し,潰瘍を殘存せしめて幽門竝幽門竇の姑息的切除を行い,術後6乃至11ケ月の觀察期關に於て成績身好なりとの報告をなして以來,直ちにFlörckenその他の學者に依つて追試され漸次一般の注目する所となり,斯る手術をMadlener氏手術と稱せられるに至つた。但し同様の手術は既にKelling(1917年),Braizew(1922年)氏等に依つて施行せられてはいるが,成績不良その他の理由で一般には注目さるゝに至らなかつたものである。Madlener氏は更に1929年斯る17例を報じ,全例に於て好成績を收め得たと報じている。1932年Zukschwerdt & Eck兩氏も胼胝性又は穿通性噴門潰瘍の5例に本手術を行つて相當な成績を擧げ,1934年Mörl氏は胼胝性噴門近部胃潰瘍に對して同樣の手術を行い良き成績を收め,手術死亡率低く而も遠隔成績良好なりと報じ,而して2例に於ては初囘の胃腸吻合術が無效であつたものに本手術を施行して,初めて治癒した事を特記している。文獻的にMadlener氏手術例120例を集めたRieder氏(1939年)の觀察に依ると,本手術の死亡率は1.7%となつて居り,大部分の患者に術前の苦痛の消失を見,就業可能となつている。
而して,我が教室に於ても今日迄4例の同手術例を經驗しているので,茲に其の症例の大略竝遠隔成績を報告し且つ2・3の考察を加えて見たいと思う。
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