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濃硫酸による全身性熱傷に對する靜脈幹結紮法の適用
三羽 兼義
1
,
萩原 三夫
1
,
高橋 堅太郞
1
1布施中央病院外科
pp.474-476
発行日 1948年12月20日
Published Date 1948/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200394
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緒言
重篤なる瓦斯壞疽症,身體各部の化膿炎衝,或は廣汎なる火傷等に續發する全身中毒症状の發現に際して,私共1)は積極的に病竈部よりの主幹靜脈を結紮して甚だ滿足すべき結果を得,既に屡々報告して批判を乞ふた。
茲に報告する症例は,濃硫酸の爆發によつて殆ど全身に亙る腐蝕性熱傷を蒙り,最初から豫後不良を想はしめた症例である。果して受傷の翌朝から全身中毒症状が漸次甚しくなり。午後になつてからは,高熱と共に尿閉,意識溷濁,譫語等の重篤症状が相次で起り,脈壓遽かに衰え,橈骨動脈の搏動を辛うじて感ずる程度となつた。これに對し輸血,その他の強心法を試みるも殆ど見るべき效を奏しなくなつたので,腐蝕程度の最も高度である全下肢よりの毒素吸收を遮斷する目的を以て,兩側鼠蹊靱帶直下に於て大薔薇靜脈を含む股靜脈根部を完全結紮することによりて,奇蹟的に病勢を好轉せしめ得たものである。爾後の經過は極めて順調となり,生命の危險を脱したのみならず,創傷治癒の經過も亦極めて良好となつた。
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