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結核に對する抵抗性
川村 達
1
1國立公衆衞生院衞生微生物學部
pp.138-139
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200719
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最近E. R. Longは,結核に對する抵抗性について綜説している。その抵抗性を支配する因子として,榮養,心理的要因,大氣,安靜あるいは勞作などにも觸れているが,中心は,Baldwinその他の,より特異的な抵抗性に關するもので,その方面の最近の傾向を述べている。この部分の簡單な紹介をおこない,關係の深い私の研究を附記して,御參考とし度い。
Baldwinは第6回國際結核會議に發表した「結核免疫の問題」の中で,結核に對する抵抗性を先天的なものと後天的なものに分け,後天的抵抗性附與に,弱毒結核生菌を用いる理論について述べた。この理論は40年後の今日,廣範なBCG接種計畫として實施化されているが,Baldwinは多くの研究者の,結核免疫の動物實驗成績が,結核死菌や製劑より生菌を用いた方が優れていることを認め,臨床的にも,結核の高い免疫性を考へ,生菌免疫による人類の結核免疫の可能性を述べたのである。その後Gardnerとの共同研究により,慢性結核症の2次感染は,外因性よりむしろ内因性ではないかと考える樣になつた。この樣な後天的な抵抗性の本態に就ては,PirquetやRömerの影響を受け,漸次ツベルクリンに對する過敏性を重視し,細胞性の防禦力を強調する樣になつた。彼の協力者Krauseは,アレルギー性炎症反應は,再感染の菌量が大きいと組織に破壞的に働くが一般には生體の抵抗力の高さを示すものであるとした。
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