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頸動脈腺の剔出が諸種の疾患に效果ある事實を當教室に於て初めて提唱したのは昭和17年11月の東京外科集談會に於てであるが其の後幾多の追試報告もあり,特發性脱疽の機質的變化高度ならざるもの,レノー病又は間歇性跛行に相當の效果を認め,又,疼痛を主訴とする種々なる神經症及び高血壓,狹心症,惡性貧血,白血病等に應用し少なくとも他の手術又は保存的療法に於て見られる效果より優れたる成果を修め得る事が實證せられた又現在多數の氣管支性喘息患者にこの頸動脈腺剔出手術を施行して居るがこの效果は實に驚くべきもので術後の直接效果より遠隔成績に於て遙かに良結果を得て居り確信を以つて現在まで行はれたあらゆる手術法を凌駕するものである事を主張出來る。そしてこの頸動脈腺は大きさが米粒の二分の一と云ふ樣な小なるものであり且又總頸動脈が内外兩頸動脈に分枝する其の分枝部の裏面にあり血管外皮中に含まれて居る。故に其の解剖學的位置の關係上から難手術の如くに考へられて居る。然しこれは局所解剖を充分に理解してをれば副損傷等をすることもなく又手術順序を適確に行へば確實に且容易に施行し得るのであつて私が行ふ場合片側の平均所用時間は10分程度である。本腺剔出手術追試者の爲に私の日常行つて居る方法を以下圖に依つて説明することとする。
第1圖は皮膚切開を示したものでこの手術は全部局所麻醉のみで施行出來る。基礎麻醉はこれを必要としない。胸鎖乳樣筋内縁に沿うて耳殻より1乃至2cm下部より3乃至5cmの皮膚切開を行ひ,次で皮下組織並に濶頸筋を切開する。この場合手術創の中央部に外頸靜脈が現はれる場合があるがこれは多くの場合外方に剥離する事に依つて切斷する憂なく手術が遂行出來る。もしこれが手術遂行上障碍となる樣であれば切斷しても何等差支はない。
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