増刊号 ERAS時代の周術期管理マニュアル
Ⅱ 併存症を持つ患者の評価とその術前・術後管理
6.その他
高齢者
森 和彦
1
,
瀬戸 泰之
1
Kazuhiko MORI
1
1東京大学医学部附属病院胃食道外科
pp.84-86
発行日 2014年10月22日
Published Date 2014/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200094
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最近の知見と重要ポイント
□術死,在院死亡が多いことに加え,創感染,せん妄などの軽症とされる合併症でも入院期間の遷延化,ADLの喪失を伴う.手術適応,適用術式の決定が重要な要素となる.しかしながら,緊急手術では適応に関して論じる術前の時間的余裕が,医療者,家族ともに少ないため,手術治療が選択されるケースが多い1).
□痛みや呼吸苦などの訴えは,聴取や把握がしばしば困難であり,見過ごされやすい.高齢者では中枢神経,末梢神経ともに神経細胞の変性が認められ,痛みや苦痛の閾値が高く,異変の把握が遅れる傾向にある2).
□術後せん妄の対策は薬物療法を中心に積極的に行う.
□薬物療法に関しては,薬効,副作用に関して個人差が大きい.
□頻繁に心疾患,呼吸器疾患が基礎疾患として認められ,過剰な輸液は厳に慎まなければならない.しかしながら極端なドライサイド管理はさらに危険であり,体液管理の安全域は狭い.
□独居の場合も含め,退院支援に関与できる親族との連絡を緊密にする.家族による退院後の生活支援が約束されない場合は,術前のADLが良好でも過大侵襲を伴う手術の適応は控えるべきである.
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