ひとやすみ・113
試練に耐える
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.816
発行日 2014年7月20日
Published Date 2014/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407105128
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- 文献概要
生命を扱う医療においては,どんなに手を尽くしても死に至ることがある.しかしながら外科医はあらゆる力を振り絞り,最後まで患者を救うべく努力を尽くす.そして期待に添う結果になれば患者と共に喜び,ささやかな自信も生じる.一方,意に反する結果になれば,呵責に苛まされる.
種々の合併症を持った高齢の直腸癌患者に,直腸低位前方切除術を行ったとする.術後に縫合不全が生じると,再開腹して腸瘻を造らざるを得ない.「最初の手術時に腸瘻も造設していれば,再手術は必要なかったのに」と大いに反省する.さらには敗血症になりレスピレーター管理にまで至ると,高齢で全身状態が不良な患者に直腸前方切除術を選択したことを悔やむ.死に至った場合には,外科医として患者に立ち向かう気力まで喪失し,新たな手術さえ拒否したくなる.周りの同僚から「患者さんの状態が悪かったから」「稀にはこのようなこともあるさ」と慰められても,落ち込むばかりである.
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