昨日の患者
寒さに耐えて咲く四季桜
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.562
発行日 2012年4月20日
Published Date 2012/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104043
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私が勤務する病院の近くに,小さな村社がある.そこには当地では珍しい,1本の四季桜が植えられている.落葉して裸になった枝に,10月末頃から小さな白い花びらを付ける.ソメイヨシノのように一斉に開花することなく,数か月にもわたって咲いては散り,散っては咲く.雪が降る時期では,枝に雪が積もっているのかとさえ見違える.厳しい季節に耐え,健気に咲く四季桜を見ると,思い出す患者さんがいる.
90歳代前半のSさんがイレウス症状で来院し,精査の結果,大腸癌であった.すでに多発性肝転移をきたしていたが,高齢であったため,単に結腸左半切除術を行った.術後に癌化学療法を行い,一時的に転移巣は縮小して腫瘍マーカーも改善したが,癌は進行した.手術1年後に食欲不振となり,肝機能も著明に悪化したため再入院した.点滴によって症状は一時的ながら改善した.
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