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一括処理の立場から
Glisson鞘一括処理法による肝門部血行処理先行肝切除術のメリットは,脈管個別処理法と比較して手技が簡便で,血行処理時間が短く,出血量の軽減にも繋がることが挙げられる.また,肝内三次分枝Glisson鞘を処理する亜区域切除に対しても切除理念が合致する.
一方のデメリットとしては,この術式が発表されてから30年近く経過したが,いまだに誤った方法で行われていることを目にする.また,肝細胞癌や転移性肝癌でも腫瘍の性格や局在によっては適応されないこともある.肝門処理法としてGlisson鞘一括法にこだわる必要性はないが,肝臓外科においてはこの術式の理念,方法に精通しておくことは非常に重要であり,手術手技に幅がもてる.
本稿では,Glisson鞘一括処理法の概念とメリット,デメリットについて解説する.
個別処理の立場から
「個別処理」は右肝切除や左肝切除,さらに左傍正中領域切除(S3+S4切除),右傍正中領域(前区域)切除や右外側領域(後区域)切除に適応される方法であり,それぞれ肝離断前に切除予定領域の動静脈を肝門部にて「個別処理」する.そのメリットとしては,①腫瘍が切除領域のGlisson鞘根部に近接するとき,肝離断後にGlisson鞘を腫瘍から離して切離できること,②動門脈を剝離していることにより,片葉阻血を容易に適応できること,③離断前の肝実質損傷とそれに伴う出血を生じないこと,④門脈内腫瘍栓陽性症例,肝門部胆管癌手術,生体肝移植手術などの肝門処理に通じることができること,などがある.特に安全性において「一括処理」よりも有利だと考え,肝切除術におけるGold Standardと考える.
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