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Billroth Ⅰ法の立場から
Billroth Ⅰ(BⅠ)法とRoux-en-Y(RY)法を比較する無作為比較試験を実施し,BⅠ法を実施する根拠となった試験結果を以下に述べる.【試験方法】対象は,BⅠ法でもRY法でも再建可能と判断される胃癌症例である.術中登録で適格性を確認後,両群をランダム割付し,主評価項目は術後1年目の体重減少割合とした.【結果】332例が登録された(BⅠ群163例,RY群169例).両群間で背景因子に偏りはなかった.出血量に変わりはなく,手術時間はRY群で有意に長かった(RY群214±180,BⅠ群210±217(分)p<0.001).術後短期合併症はRY群で嘔吐,胃内容停滞などが有意に多かった.術後1年目の体重減少割合はBⅠ群9.1%,RY群9.7%と有意差を認めず(p=0.39),そのほかの栄養指標においても有意差を認めなかった.【結果】1年目の術後の栄養状態,QOLなどに大きな差はなかった.以上の結果から,手術が簡便で,術後短期成績に優れているBⅠ法を選択すべきだと結論した.ただし,逆流性食道炎は,BⅠ法での克服すべき課題である.
Roux-en-Y法の立場から
Roux-en-Y法を選択するメリットとして,
①残胃が小さい場合の再建が可能,②吻合部に緊張がかかりにくい,③十二指腸液の逆流が少ない(逆流性食道炎が少ない),④十二指腸付近の局所再発がある場合に影響を受けにくい,⑤残胃癌の手術は比較的容易,といった点が挙げられる.
一方,デメリットとしては,
①吻合箇所が多い,②術後の胆道系疾患(総胆管結石など)や十二指腸腫瘍に対する内視鏡的治療のためのアプローチがしづらい,③食物通過ルートが非生理的(十二指腸を食物が通過しないことから十二指腸関連消化管ホルモンの分泌障害が起こりうる.術後胆石の発症率が高いという報告もある),④術後十二指腸が盲端になるため縫合不全を生じると致命的となりうる,⑤挙上空腸作製のために間隙ができることで内ヘルニア(ピーターセンヘルニアなど)を生じる可能性がある,といった点が挙げられる.
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