特集 ディベート★消化器・一般外科手術―選ぶのはどっちだ!
消化器外科手術
テーマ1◆食道胃接合部癌に対するアプローチ
食道胃接合部癌に対するアプローチ:経腹 vs 経胸
pp.134
発行日 2014年2月20日
Published Date 2014/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104933
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経腹の立場から
①経腹を選ぶメリット
経裂孔アプローチでの徹底した下縦隔郭清により,開胸と同等もしくはさらに優れた予後が期待できる,合併症が少ない,術後の呼吸機能が優れる,体位変換が必要ない,手術時間が短い点がメリットである.
②経腹のデメリットとそれに対する考え方・対処法
胃を使った再建時には視野確保が困難である,小腸を用いた高位での再建が難しい,開胸手術に比し解剖の把握が難しい,という手技上の困難性がデメリットである.これらに対しては,経裂孔視野で開胸することにより視野は格段に向上する,腹腔鏡や内視鏡下手術用の器具を補助的に利用するなどの工夫により,克服可能である.
経胸の立場から
われわれがめざす普遍的な目的は,患者を根治へ導くことである.食道胃接合部癌の腫瘍学的見地に基づき至適郭清範囲を同定し,根治性を優先した術式を決定する必要がある.縦隔リンパ節転移は組織型にかかわらず解剖学的位置によるリンパ流に規定され,食道浸潤長が20 mmを超えるものには高い縦隔リンパ節転移リスクがある.これらには“右開胸食道亜全摘2領域郭清”が必要であり,縦隔転移を認めた例でも開胸手術による5年全生存率は47%で,長期生存は可能である.わが国においては右開胸食道亜全摘術の安全性は確立されており,リスク回避のために開胸を避ける必要はない.今後,根治性を最優先する立場に立って症例を蓄積し,より正確なリンパ節転移状況を把握し,真の治療方針を構築する必要がある.
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