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■■はじめに
開腹手術の無作為抽出試験であるJCOG9502 studyにおいて,食道浸潤胃癌ではその食道側浸潤の長さが3 cm以下であると,下縦隔郭清を伴う左開胸手術の追加は根治性のメリットがなく,呼吸器合併症が増えることが指摘され,その意義は少ないことが明らかになっている1).したがって,このようなケースでは経食道裂孔的に下縦隔の郭清と再建を行うべきと結論されている.しかし,実際にこれを腹腔鏡下手術にて再現しようとしたとき,口側断端が癌浸潤陰性になるように切離するとその再建は容易でないことをたびたび経験する.これは食道浸潤長のみにおいて規定されるものではなく,食道の短縮や裂孔ヘルニアの存在,体型にも大きく左右されることは言うまでもない.もちろん3 cm以上の食道浸潤胃癌で下縦隔にリンパ節転移があれば予後はきわめて不良であるが,切除の方針ならば十分な郭清と安全な再建を考慮する必要がある.
そのようなとき横隔膜を切離して大きく左胸腔に術野を作製するか,再建においては経口アンビルを用いたサーキュラー・ステイプラーで行うか,さらには中下縦隔郭清と再建を右胸腔から胸腔鏡下に行うなど様々な工夫を必要とするが,いずれにせよ安全に施行するだけの知識と技量を身に着けておく必要がある.筆者らは,腹腔鏡下手術にて腹腔内操作を終えたのち必要と判断したならば,患者を腹臥位にして行う胸腔鏡下手術を併用している2,3).最近ではこのような術式すべての操作をIntuitive社のda Vinci Surgical Systemを用いてロボット支援手術として施行することもできる.本稿ではこれらの術式を解説し,knack and pitfallsに言及する.
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