ひとやすみ・77
大災害への備え
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1371
発行日 2011年10月20日
Published Date 2011/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103759
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私が勤める仙台赤十字病院は,基本方針に地域医療および災害医療を担うことを謳っている.そして,災害拠点病院として災害派遣チーム4班を常備し,DMAT隊員を養成し,しばしば防災訓練を行ってきた.さらに2系統の自家発電装置を備え,医薬品,食糧,水を備蓄し,ほかからの援助なしでも48時間は医療を行える環境を確立してきた.それでは,当院の震災への備えは,今回の東日本大震災では十分に機能したのであろうか.
築29年の病院であったが,現在の耐震基準をクリアしていたこともあり,震度6でも倒壊などの大きな損害は生じなかった.また,沿岸部から離れた場所に存在するため,津波とはまったく無縁であった.ライフラインこそすべて停止したが,自家発電や貯水槽の水によって確かに地震発生当初は病院機能を維持することができた.しかし,未曾有の規模の東日本大震災では,その後の想定がまったく異なっていた.地震,津波,放射線被曝と被害が甚大で,しかも被災地が広範囲に及んだ.さらに,強い余震が続いたため,交通網は長期間にわたって完全に遮断し,物資が底をついた.
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