昨日の患者
天国からのエスコート
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.768
発行日 2011年6月20日
Published Date 2011/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103587
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人生において試練は多々あるが,最も耐えがたい試練は家族との別れだと私は思う.特に,幼き子供らを残してこの世を去らなければならない場合には,あまりにも非情な人生を怨んでも怨みきれない.しかしながら,時がすべてを癒し,新たな希望を生み出すものである.
30歳代後半であった20数年前,同年代のAさんが上腹部痛と食欲不振を訴えて来院した.上部消化管内視鏡検査を行うと,進行した胃癌を認めた.そこで手術を施行したが,癌はすでに腹膜にも転移しており,単に胃切除術のみに終わった.術後に奥さんには進行癌と告知したが,Aさん自身には当時の慣習で単に潰瘍で胃切除をしたとのみ説明した.
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