勤務医コラム・25
外来から見える世の中
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.723
発行日 2011年6月20日
Published Date 2011/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103579
- 販売していません
- 文献概要
医者になって28年が経ちました.はじめの21年は大学病院・国立病院にいて,厳しくも懐しい日々でした.食道切除再建の大変さ,肝切除の怖さ,PDの美しさ,を教えていただきました.特に肝切除については,術者として250例も経験させていただき,外科医としては幸せなほうであったと思います.しかし,今思えばあの頃は,“financialにもpsychosomaticにも問題のない患者さんに発生した物理的な問題を,物理的に解決しようとしていた”という意味において,非常に特殊な環境にあった,と言えると思います.
ここ7年間は,市中の小さな外科系病院に居て,昔よりもはるかに卑近なことを問題として日々を過ごしているわけですが,ところがどっこい,それほど卑近でもないのです.心暖まる出来事も多い反面,リアルな現実に直面することも多々あります.社会的な問題を抱えた方々においては,外科疾患の物理的解決が困難であり,解決する意義さえ乏しいことがよくあります.パスもガイドラインも通用せず,その場その場で絵を描いていくしかないので,偉い先生からすれば,エエカゲンな奴に見えるかもしれません.新聞やテレビの報道によれば,国債発行が増え,医療や介護にかかるお金もどんどん増えて,この先いったいどうなるんや? と心配です.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.