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このところ診療拒否,たらい回し,医師不足などの記事や報道を目にしない日はないといってよいが,皮膚科においては純粋な医師不足の面以外にも,のべ患者数,つまり複数の医療機関を同時期に受診する患者さんが増えているのではないかと感じることが多い.実際,外来をしていると「近くのお医者さんにかかったけど,よくならないので来ました.」「いつ受診したの?」「昨日です.」「……(そりゃ良くならんわな).」といった会話が増えている気がする.「最近の患者さんは我慢が利かない,皮膚科外来はたらい回しじゃなく,患者さんが自分でたらいをかついでやってくる!」と愚痴ることもあるのだが,患者さんの話を聞いていると,「前の病院は薬だけ出されて様子を見ましょうと言われた.いつまで様子を見ればいいのか?だから心配で来ました」と言われることもあり,われわれの側にも問題があることに気づかされる.診断はした,処方もした,でも患者さんの不安を取り除いていないケースがこういう事態を生んでいるのかもしれない.きちんとした診断,治療はいうまでもないが,忙しい外来のなかでも,患者さんの3大質問「うつるのか? うつらないのか?」「内臓が悪いのか?」「風呂に入って石鹸を使ってもいいのか?」に丁寧に答えること(ちなみに患者さんから聞かれる前に答えてあげると,信頼度が上昇します),急性疾患でも慢性疾患でも今後の見通し(かゆみ,痛みはいつとれるのか? 肌はいつきれいになるのか?)を立て,患者さんの不安をとり除くこと,外用の仕方をきちんと指導すること.当たり前のことではあるが,“医師不足”の世の中で,皮膚科専門医としての存在感(科学に裏打ちされた予言者としての役割も含めて)を日々の診療のなかで発揮していこうと改めて思った次第である.
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