連載 やさしい社会保障 政策はだれのもの?・4
ニッポンの“わがまま”預かります(下)―世の中がわがままを変える
八神 敦雄
1
1厚生労働省雇用均等・児童家庭局
pp.326-328
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100087
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0歳児保育か育児休業か
仕事と0歳児の育児を両立させるためには,(受け入れ枠の空きがあるかどうかという問題はあるものの)保育所に預けるか,育児休業をとるか,という2つの選択肢がある。0歳児の公的保育には多額の公的助成が行なわれていることから考えると,育児休業が取得可能なのに,自分のキャリアを中断したくない,とか,仕事が面白いから,といって保育所を利用することは,“わがまま”といえないこともない。ちなみに日本における0歳児保育の利用者は約7.9万人(0歳児の7%)にのぼるが,スウェーデンでは育児休業を取得するのが当たり前で,0歳児保育の利用者は全国でわずか23人(0歳児の0.02%)に過ぎない(!)。
そうはいっても,日本で育児休業をとろうとしても,休業中の所得保障が40%までしかないことや,中小企業では代替職員の確保も難しく実際には取得しにくいのが実情だ。また,女性の取得率が70%に対して,男性の取得率がわずか0.5%程度に過ぎないという問題もある。それに,そもそも出産を機に約7割が離職しており,女性の取得率70%というのも,仕事を辞めなかった人の中での話に過ぎない。さらに,最近は正社員が減り,パートなど育児休業を取得する権利のない就労形態で働かざるを得ないケースも増えている。現実にパート,派遣などの非正規雇用が労働者の3割を超え,かつ女性の半数以上が非正社員となっている実態から見ると,育児休業なんて夢のまた夢,という声が聞こえてきそうだ【参考1】。
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