映画の時間
—たったひとりの言葉が世の中の声を変えていく—ぼくは君たちを憎まないことにした
桜山 豊夫
pp.1275
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210205
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身近な人の死は激しい悲嘆をもたらします。それが突然であれば、なおさら悲嘆は深いものになるでしょう。今月はテロによって最愛の妻を失った主人公の心の軌跡を描いた映画をご紹介します。
2015年のパリ、作家である主人公アントワーヌ(ピエール・ドゥラドンシャン)は、ヘアメイクアーティストの妻エレーヌ(カメリア・ジョルダーナ)と、1歳半を過ぎたばかりの息子のメルヴィル(ゾーエ・イオリオ)と、3人で幸せな生活を送っています。11月13日の金曜日、その日も仕事に出掛ける妻を見送り、むずかる息子を保育園に預けて、新作の執筆に取り掛かります。仕事から帰ったエレーヌは、友人とイーグルス・オブ・デス・メタルのライブを観にバタクラン劇場に出掛けて行きます。息子のメルヴィルを寝かしつけ、のんびりと読書するアントワーヌに兄のアレックス、エレーヌの姉アニーから緊急のメッセージが送られてきます。テレビをつけたアントワーヌの目に入ったのは、サッカースタジアム周辺とバタクラン劇場で起こった同時多発テロのニュースでした。
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