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最近は外科志望の医師が減少しているといわれている.外科医を増やすためには,まず実技教育を含めた生き生きとした充実した学生教育を行う必要がある.一口に外科といっても,消化器外科,呼吸器外科,心臓外科,乳腺外科,小児外科などその領域は広い.外科領域の臨床だけでなく,外科学に関係する遺伝子学や免疫学などを含めた基礎教育など幅広い教育も必要となってくる.さらに,臓器移植,遺伝子治療,新薬による治療などに関する倫理的な教育も必要となってくる.このような幅広い要請に十分に応える外科の優れた学生向け教科書が必要なことは言うまでもない.『標準外科学』は今回で第12版となり,1976年の初版発行から30余年が過ぎた「標準」と付いていることに恥じないロングセラーである.現在,外科学の一線で活躍されている先生方の多くも使用された教科書であると思う.本書はその表紙から紙面まで大きく変わっている.真っ白な表紙は,刷新された本書の意気込みや潔さが象徴されている気がする.
評者は麻酔科医であり,外科医ではない.良書であることを知っているので気軽に書評を引き受けたものの,麻酔科医である私が適任かどうかについて悩むこととなった.そこで,学生になった気持ちで本書を読むこととした.教科書はまず読み応えがなくてはならない.単に調べるため,あるいは記憶するためだけの本は,教科書とは呼べないであろう.ざっと章だてを眺めてみると,総論には,歴史,外科侵襲の病態生理,ショック,外科診断法,無菌法,基本外科手術手技や処置,出血,止血,輸血,救急外科,急性腹症,損傷,外科損傷,腫瘍といった章が並んでいる.さらに,近年学問的進歩が著しく,臨床的にも応用が進んでいる免疫,分子生物学,臓器移植,人工臓器,再生医学,リスクマネジメントといった章が続く.次に各論では,顔面,口腔,頸部,乳腺,心臓,血管,消化管,肝臓といった部位別,臓器別の章が続いている.老人外科,小児外科は別立ての章となっている.
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