昨日の患者
祖父からの祝辞
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.179
発行日 2011年2月20日
Published Date 2011/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103417
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- 文献概要
人は人生において多くの人と交わり,そして周囲の人たちに数多くの思い出を残して黄泉の世界に旅立っていく.残された人々はいつまでも故人を偲びたいと願っていても,日々の生活に忙殺され,故人との思い出は次第に薄れがちになる.しかしながら,残された故人の手紙や写真に接するとフラッシュバックのように思い出される.
Sさんは90歳で大腸癌の手術を受け,肝転移で92歳で亡くなった.亡くなる直前まで意識は明白であり,病床に伏せながらも大好きな詩歌などを広告用紙の裏に書き記していた.Sさんが亡くなって半年後に娘さんから手紙をいただいた.手紙には主治医であった私への思いが綴ってあり,また,Sさんがパチンコ店の広告紙の裏に書いていたという,医師となった孫の結婚式で述べるはずであった祝辞がコピーされて同封されていた.
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