勤務医コラム・19
一人の治療が二人分
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.1683
発行日 2010年12月20日
Published Date 2010/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103352
- 販売していません
- 文献概要
Nさん夫婦のお宅は当院のすぐ隣り.お互い病気知らずで70歳までやってきた.3年前のある日,N夫さんに黄疸が出て当科へ入院した.Papilla Vaterの癌で,減黄処置したが,肝転移があり切除できずに化学療法を行った.これが思いのほかよく効いて,CRとなり元気に退院した.しかしいつ悪くなるかわからず,奥さんは不安な日々を過ごしていた.
1年経って,N夫さんはピンピンしていたが,奥さんに進行胃癌が見つかり,胃を全摘して化学療法を加えた.今度はN夫さんが心配して,いろいろと尋ねてくる.お互い外来で抗癌剤を処方されている身なので,一緒に通院すればよいのに,なぜか別々にやってくる.自分のことも気になるが,相手のことも気になる.別々にソーっとやってきて,自分のことでなく相手のことを尋ねて帰っていく.たまに病院の外来ではち合わせすると,憎まれ口ばかりたたいているが,見ていてなんだかほほえましい.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.